鯉ヘルペスが広がって、各地で感染が確認されています。釣堀のお客さんも減ってしまうなど、二次的な被害も出ているようです。
同じとは言えないかもしれませんが、鮎の場合は冷水病。こちらは鯉ヘルペスのウィルス感染とは異なり細菌感染で、鮎の解禁時期になると漁協や釣り人の間では関心が高まります。今シーズン(2003年)、解禁間近の郡上白鳥地区では冷水病によると思われる鮎の大量斃死がありました。現場を自分の目で確認した訳ではないのですが各種報道によるとかなりの数で、深みが死骸で一面真っ白の場所もあったそうです。大和町では流されていく鮎の姿を何度も見かけましたし、7月に入っても弱って流れに漂う野鮎の姿を目撃しました。しかし報道機関に大きく取り上げられた記憶はありません・・・。
冷水病による斃死は鯉ヘルペスと同様に魚病による被害ですし、鮎の場合は稚魚ですと魚の大きさが小さいから目立たないだけで、死んだ数からすれば鯉の数より多いかもしれません。それに冷水病による被害が報告されてからの歴史も鯉ヘルペスに比べればはるかに長く(※脚注参照)、漁協が稚鮎の放流に投資する費用からすれば、被害金額もかなりの額になるのではないかと思います。
今回の鯉ヘルペス被害では、政府によって魚の移動を禁止されたり、民間でも自主的に販売や購入を中止する動きが出ています。報道機関に取り上げられたからといって冷水病が収まる訳でもないでしょうが、冷水病の被害などが友釣りに全く関心のない人の眼にも留まるようになれば、社会的に対策の動きが加速するだろうと思います。スーパーの店頭に並んでいた養殖鮎の中には、冷水病で弱った(or死んだ)ので急遽出荷したのではと疑ってしまうような物を見かけたこともあります。もし冷水病のことを消費者が知っていれば、人に感染しないとは言っても様子が変な鮎の購入は手控えるようになるでしょう。ただそうなると風評で、養殖や天然鮎の需要が減って値段がガタッと下がってしまう恐れが無いとも限りませんけど(汗)。でも経済的な影響を強く受ければ、規制や対策が早く進むことは期待できます。
まあ今のところ、冷水病に感染しているらしい野鮎が掛かっても、自分では持ち帰って食べてしまっています。しかしヘルペスの場合、人には感染しないとは言っても病気が進んだ鯉はかなりひどい姿になっていますので、それを食べようという人はほとんど居ないだろうと思います。ただ鮎の場合も冷水病は人に感染しませんし、感染した鮎でもよほどひどくなければ見た目には食べても大丈夫な感じなのが救いです。
鯉の養殖や流通関係の方々にはお気の毒ですが、鮎の冷水病では鯉ヘルペスの轍を踏まないで欲しいと思っています。冷水病の予防や蔓延防止は困難でも、放流する魚苗の環境馴致を十分するなどの対策によって発病そのものをうまく防いでいる漁協もあります。他の漁協も、成果を上げている漁協に倣うなどして放流方法や漁場管理にも注意を払って欲しいです。また我々釣り人としは、せめてゴミは持ち帰るなどささやかでも釣り場の環境を維持するようにしていきたいです。
※ コイヘルペスウィルス(KHV)は1997年にイスラエルで初めて発見された。冷水病は、もともとは北米のマス類の病気で日本では見られなかったが、1987年に徳島県で鮎の冷水病菌が確認された。