瞬間接着剤。主成分はシアノアクリレートという合成樹脂。これは空気中の水(水蒸気)を取り込んで、硬化(重合)します。ですので瞬間接着剤が固まるという意味での“乾く”という表現は誤りです。この瞬間接着剤、液体の状態では意外に早く劣化して、硬化した後の樹脂が脆くなります。
以前のことですが、ある日突然、掛け鈎のすっぽ抜けが発生するようになりました。前回接着したのは大丈夫で、今回接着したのはほとんどすっぽ抜ける。とても使える状態ではなかったので、その接着した掛け鈎の使用は中止しました。その時にはまだ、接着剤の劣化には気が付いていませんでした。接着剤の付け方が悪いのだろうと思って付け方をいろいろ工夫してみたりもしましたが、一向に改善されません。ハリスに使う糸の銘柄によって付いたり付かなかったりしたので、ハリスの銘柄を変えて一応すっぽ抜けは収まりました。
今シーズン(2003年)の中頃になって新しい瞬間接着剤をおろしました。すると、今まですっぽ抜けて付かなかった銘柄の糸が抜けずにうまく接着します。「どういうことですの?」すっぽ抜ける掛け鈎の接着と抜けない接着とでは何が違うのか?いろいろ調べてみました。結果、分かったこと。抜ける接着ではカッターで根巻糸を切り開くと簡単に剥がれ、接着剤が粉(ボロボロ)になってしまいます。また掛け鈎には、カスがほとんど残りません。ところが抜けない接着では、カッターで根巻糸を切り開いても容易には剥がれず根巻糸はコベコベ。掛け鈎にもカスがかなり残ります。おまけにその接着カスは鈎にしっかりくっ付いていて、カッターの背中でこそげ落としても容易には取れません。
「なるほど、接着剤が変性(劣化)していたのか。」ならば原因は何か?思いついた原因は2つ。光と湿気(水分)です。私は瞬間接着剤に注射針の様なノズルを付けて使っています。そのためケースから出したまま、明るい所へ置いていました。ですので常に光に曝された状態です。また新品に比べて若干粘度が大きくなっていましたので、少なからず吸湿もしていました。これが光と湿気を原因と考えた理由です。しかし湿度が原因だとは考え難い事実がありました。瞬間接着剤は残り少なくなると、大概粘度が増してきます。ですのでそれまでにも何度となく、とろとろになった接着剤で掛け鈎を付けていますが、すっぽ抜けが発生したことはありませんでした。それが突然すっぽ抜けが多発したということは他の原因、すなわち光の影響ではないかと考えられるからです。ところが光を原因とするにも疑問があって、もし光で劣化するのでしたら容器を着色するなどの対策が為されていそうなのですが、接着剤の容器は透明なままです。ですので光の影響は無いのかとも考えました。更にいろいろ思い返してみて、ひとつ気が付いたことがありました。それは保存方法が違っていたことです。すっぽ抜けのは外に出したまま。それまですっぽ抜けなかった接着剤は、半透明ではありましたが接着剤が入っていた袋に入れて保存していました。ですので、袋に入れなかったために被爆する光線量が多くなって変性したのではと仮説を立てました。
そこで改めて接着剤の注意書きを読み直しました。コニシやセメダインから発売されている瞬間接着剤には、「直射日光を避け、冷暗所で保存する”としか書いてありませんでしたが、上州屋から発売されているのにははっきりと書かれています。“使用しない時は10℃以下の冷暗所に保管して下さい。通常1年程度が有効期間です。保管状態が劣悪な(高温、多湿、光の当たる、等の場所)場合は通常より早く劣化しますのでご注意ください。」だそうです。直射日光ではなく光が当たる程度でも劣悪とは驚きましたが、光によって劣化することははっきりしました。
光によって劣化するとは露知らず、出しっ放しにしていました。しかし光によって劣化すると分かっては対策が必要です。そこで私が採った保存方法は、黒い箸箱に入れて保存することでした。これなら長いので、ノズル付きでも入ります。もし掛け鈎のすっぽ抜けが多発したり接着力が弱くなったと感じたら、接着剤が劣化した可能性も疑ってみる必要があると思います。瞬間接着剤は光で劣化することをお忘れなく。