第13回 良型対策


今シーズンは高水続きでなかなか釣り難いですが、そろそろ20センチオーバーも掛かるようになりました。良型の鮎が掛かるようになると、いろいろなトラブルが発生します。しかしちょっとした工夫で未然に防げることもありますので、いくつかお伝えしたいと思います。

よく発生するのがハリス切れ。掛け鈎のハリスが切れることもあればハナカンハリスから切れたり掛け鈎がすっぽ抜けたりと、アタリがあってのことですのでトラブルによる精神的ショックも大きいです。

まず、掛かったショックでハナカンハリスや鈎ハリスが切れるのは、掛かり鮎が大きいからと考えがちですがそうではなく、オトリが大きい(重い)ために切れるのです。これは高校の物理で習った“慣性”によるものです。オトリが小さければ掛かり鮎に引っ張られて動いて行きますが、オトリが大きいとそれだけ動き難い(慣性が大きい)ので引っ張り合いになり、ハリスが耐えられなくなって切れます。ですから大きなオトリを使う場合はそれに耐えられるだけの太さ(強さ)のハリスを使う必要が出てきます。

慣性については、(力:F)=(質量:M)×(加速度:A)という式で表され、加速度が一定ならば質量に比例して力がかかります。例えば初期に、最大18センチ(約60グラム)ぐらいのオトリに対応できる仕掛けを使っていたとして、ハリスは0.8号でほぼ切れなかったならば、20センチオトリですと約80グラム見当になりますから、0.8号×1.33倍で約1号の太さは必要になってきます。また掛かり鮎が大きくなると、掛かったときに走り出す加速度も大きくなることが予想されますし、オトリが大きくなったことで水による流体抵抗も増加します。ですので安全をみてハリスなどで0.8号だったのを1号でなく、1.2号や1.5号にするとかの選択も必要かと思います。最終的には実釣で決めることになると思いますが重要な原則は、オトリの大きさで仕掛けの太さ(強さ)を検討することです。

掛け鈎のハリスがハリス止めで切れるトラブルに関しては、ハリス止めを替えることでかなり軽減できます。ハリス止めをY字型(穴に通す式)からJ字型(引っ掛ける式)にして、1回クリクリッとハリスをハリス止めに回して止める様にします。以前、益田川で大オトリを使って頻繁にハリス切れが発生したので、本に書いてあったJ字型のハリス止めを使うやり方を試したところ、全くといっていい程ハリス止めで切れることは無くなりました。試す前には、いちいちハリス止めにクリクリ回すのは手間が掛かるようにも思いましたがそれは思い過ごしで、実際には手間はほとんど掛かりませんでした。また、サカバリを浅めに打つとかも対策になりますが、これは個人の癖でもありますのでハリス止めを工夫する方がストレスがないものと思います。

それと以前、頻発して困ったのがハリスのすっぽ抜け。掛かったショックで掛け鈎がハリスから抜けてしまうやつです。私はハリスをルアー用のナイロン糸やフロロカーボンのスプール物を切って使っているので、中には瞬間接着剤が効きにくい銘柄があります。ですので焼き玉を作ってすっぽ抜け対策をしているのですが、焼き玉が焦げていたりすると焼き玉がちぎれて掛け鈎がすっぽ抜けます。焼き玉でなく結びコブにすると確実ですが1本1本結ぶのは手間がかかり面倒。なんぞ良い方法はないかと思案した結果、思いついたのはアイロンを使うやり方です。ライターやロウソクの炎を使うと、時には焦げてしまいますがアイロンですとバッチリ。焦げることはありません。自宅のスチームアイロンですと温度は最高(木綿)の位置。ハリスをまとめて押し当てると、先端部が融けて程よく縮みます。先がモヤシみたいにフニャフニャと曲がるのが気になる方は、温度やアイロンへの当て方を加減すれば真っ直ぐのまま先端部だけがうまく融けます。また一度に押し当てる本数を加減すれば、先端部がくっ付いて固まることも防げます。ほんの少し太くなれば、たとえ掛け鈎がずれても抜けてしまうことは無くなりますので、それほど大きな焼き玉は必要ありません。これでナイロンとフロロカーボンは良いのですが残念なことに、ホンテロンはアイロンでは焼き玉は作れない様です。先端が玉になるまでの温度には達していないみたいです。

最後はトラブルというほどではないと思いますが、サカバリの折れや伸び。小鈎や細軸を使っていて、少し深く打ち過ぎたりすると発生することがあります。対策としては小鈎でも太軸にすればよいので、スレならヘラ用の鈎を使うとか渓流用の鈎をサカバリとして使ってみては如何でしょうか。しかしサカバリが折れたり伸びたりすることによってハリス切れの発生が防がれていたりする可能性もあるので、サカバリを丈夫な物に替えるのは一考かもしれません。

ここでお伝えしたトラブルは、場合によっては1日に何度も発生する可能性があります。友釣り以外のほとんどの釣りは、あわせを軽くするとかでショックを和らげることも出来ますが、友釣りでは掛かった時のショックをコントロールする手段が無いので、仕掛の強度で対応するしかないでしょう。仕掛けを頑丈にすることは、オトリに負担をかけることにもなるので迷うところではありますが、繰り返し発生する可能性や1匹を確実に取ることを考えると、対策を施した方が良いだろうと思います。


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Yoshihiro Sogabe in Gifu 2003-07-21