第10回 オトリの技術(2)オトリ管理


前回はオトリを選ぶ技術でしたが、今回はオトリを管理する技術です。

オトリ缶を川の中へ入れる場合に、まずやる必要があるのは温度馴致、いわゆる”水合わせ”です。これを知らない人が多い。知っていてやらないのは、自己責任ですので範疇外。かく言う私もおろそかにして失敗することが時々あります(汗)。既にみなさんはご存知だと思いますが一応やり方は、まず川に着いたら片手をオトリ缶に、もう一方の手は川の水にと同時に両手を入れて温度を比較します。川の水の方が冷たい場合とほとんど変わらない場合はそのまま沈めてもかまいません。問題は川の水温の方が高い場合です。「ちょっと川のほうが温かいな」と感じる程度の場合、川の水を手ですくって少しずつオトリ缶に入れていきます。そしてほぼ同じぐらいの温度になったら、オトリ缶ごと沈めて15分ぐらいは置いておきます。「かなり違うな」という場合。川の水をすくって少しずつオトリ缶に入れていくのは同じですが、オトリ缶の方が「ちょっと温かいかな」程度まで水を入れたら、10分ぐらいはそのままで置いておきます。たくさんオトリが入っていて酸欠が心配な場合は、出来ればいくつかのオトリ缶に分けてエアポンプでエアレーションしておきます。そして時間が経ったら更に川の水をすくって入れて、大体同じぐらいの温度にまでなったら川へ沈めます。その後出来るだけ長時間、川の水温に慣らします。それでも失敗して、死んでしまわないまでもオトリが浮いて潜らないことがあります。なるべくなら高水温の時期には、冷たい水で飼われているオトリを買わない方が良いのですが、そうも言っていられない場合もありますので十分注意して扱います。

これにも秘密技?がありまして、温度馴致を必要としないオトリの買い方があります。それは川の水を引いてオトリを飼っているオトリ屋さんで買うのです。川のほとりのオトリ屋さんでも井戸水や谷水の場合がありますが、オトリの水槽に手を入れれば直ぐに分かります。その場合は「井戸水ですよね?申し訳ない。また来ます」といって他の店へ回ります。個人的には7月中旬までの、水温がそれほど高くならない時期はどこのオトリ屋さんでも買います。8月に入って高水温になる時期には、近くに適当なオトリ屋さんがない場合は井戸水のところでも利用しますが、川水で飼うオトリ屋さんを選ぶとなるとオトリを買える店は限られてきます。常々あちこちで買ってみて、川水のオトリ屋さんを把握しておくと良いと思います。自分としては温度馴致の手間や馴致不足で失敗するリスクと、多少離れた所へでもオトリを買いに行く手間とを比較した結果です。

前回、養殖オトリではなかなか掛けられない場合には天然オトリを買う手段もあると書きましたが、天然オトリの選び方について述べます。まず、絶対に避ける天然オトリ。それはヒレがスカスカのオトリです。注意してみれば上からでもよく分かります。渇水時にバテオトリのヒレを見ると周囲が白く透けて見えますが、そのヒレの状態です。ヒレスカは養殖にも通用しますが、これは常にダメです。養殖のエースオトリでもダメ。なぜか。天然オトリは日持ちが短く、せいぜい持っても掛けてから4日。8月も中旬になるとアカの状態と使った頻度によっては明くる日でも厳しい時があります。ヒレスカになるのは食べていたアカを消化しきり、更に背中の脂も使いきった状態です。元気そうに見えても体力が無いのですぐに中層を泳いだり、最悪の場合水面ヒラヒラと言うことになります。「安くしておく」と言われても絶対に買ってはいけません。天然のみならず養殖もヒレスカは脂を使い切った状態ですので必ず避けます。あとは掛かり所。仕入れても売れる前に死んでしまっては赤字ですし商品ですので、致命的な掛かり所のオトリは置いていないと思って差し支えありません。しかし、きわどい所のは時々見受けられます。腹周りと尾ビレ周りは要注意です。ただちにダメと言うことはないにしても、できれば避けます。ただここで、オトリ屋さんが自前で釣ってきた野鮎を販売する店もありますので、掛かり所には一応注意します。そして、一般的に悪いといわれる掛かり所を避ければ十分と思います。それと天然を買って良い時期ですが、7月いっぱい迄がまず無難。先にも述べましたが、8月も中旬になると明くる日でも厳しいことがありますので、8月になったら養殖にしたほうが良いと思います

さてここで、掛かりが遠退いて持っていたオトリが全部弱ってしまって出せるのが無い。どうするか?同行の釣り人から借りる。オトリ缶を深い所へ沈めて回復するのを待つ。しかし一度お試し頂きたいのは釣り場で釣り人に分けて頂くことです。良く掛けている人に見当を付けておいてお願いする。見知らぬ人に声を掛けてオトリを分けて頂くのは少なからず心理的に抵抗があると思われます。でもそれは初めの1回だけ。親切な人ならただで下さったり、ポイントを教えて下さったりもします。それで釣果に恵まれて、帰り際に会ったりしたときに「お蔭様で釣れました」とお礼でも言われればそれこそうれしいものです。500円玉をベストに入れておいて、いざとなったら現場で買うという方法を心の片隅に留めておいても損はないと思います。ただ、オトリが全部パンクしてしまうようなポイントは、まずダメ場所です。買ったついでに場所変えした方が良いとは思います。


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Yoshihiro Sogabe in Gifu 2003-06-30