第9回 オトリの技術(1)オトリ選び


“オトリの技術”って何ですの?世の中上手い下手があるのはコツというか技術が存在する訳でして、オトリに関してはオトリを選ぶ技術とオトリを管理する技術に分けられると思います。

まずは選ぶ技術。まあ養殖の場合、大きさや太り具合、色は当然として、大概は”元気なオトリ”を選びなさいと教えられます。そうとも言えます。しかし理想は“すぐ掛かるオトリ”、もしくは“良く掛かるオトリ”を選ぶべきです。言われてみればその通りです。1匹目が直ぐに掛かれば良い訳ですし、元気でもなかなか掛からないのもあれば、弱っていても直ぐに(or良く)掛かるオトリもあります。私はこの選択基準を知ってなるほどと思うと共に、よく気が付いたものだと感心しました。私が知ったのは村田満氏の著書『縄張りを捨てたアユたち』(廣済堂出版)で村田氏は良く掛かるオトリを”エースおとり”と呼んでおられます。私も倣ってエースオトリと呼ばせて頂きます。他にもよく釣れるオトリを、世良康氏著『鮎が釣れる人釣れない人』(釣り人社)では“当たりオトリ”と称して同様な紹介があります。

村田氏は著書の中で養殖についても天然についてもエースオトリが存在することを認めておられますが、ではその特徴や選ぶ時の基準はと言うと、まだ良く分からないとのことです。エースオトリの特徴を調べるべく色々なタイプのオトリを買ってみましたが、どうもそれらしいということが、おぼろげながらつかめましたのでお伝えします。

まず間違えはなさそうなのがいわゆる”えびす鮎”です。早い話が奇形で、背ビレと尾ビレの間が短く寸詰まり。オトリを選ぶ時に上から見ると尻尾が何となく短く見えるのがいますが、大オトリや相当弱っている場合はともかく、程々の大きさでまずまず元気なら迷わずGetします。ただし極端に寸詰まりで、金魚みたいに見えるほどの奇形は、オトリ屋さんには滅多に入って来ない様です。何となく寸詰まりぐらいでもまれに見る程度で、金魚ぐらいになるとかつて1回あったくらいでしょうか。

次は大体手に入る、標準的なパターン。この二つの組み合わせの効果の程はあやふやですが、一応自分としての選択基準にしています。まずは小さ目で余り泳がないオトリ。弱って泳がないのではなく、どちらかと言うとジッとしている感じのオトリです。このオトリにハナカンを付けて出すと、ツッツー、ツッツーと断続的に泳ぐことが多いようです。この断続的に泳ぐのが効果的らしく、浅トロでかなりの威力を発揮します。次にレギュラーサイズで比較的良く泳ぐオトリ。この泳ぎ方が重要で、一定方向に泳ぎ続けるのを選びます。泳ぐと言ってもあちこちと言うか、めちゃくちゃ四方八方に泳ぐのはダメです。下手をするとハナカンを付けて出しても下もへばかり泳いで手に負えないオトリのこともあり、要注意だと思います。このレギュラーサイズの良く泳ぐオトリは瀬やトロ場用です。

また養殖ではどうしても1匹目を早く掛けられない方は、いっそのこと天然オトリを買う手段もあります。養殖2匹でモタモタするより300円くらい余分に出して、サッと1匹目を掛けて1日楽しんだほうが得策ではとも思います。店で買うと養殖よりも値段は高いのですが、これも買い方ひとつで、釣り場で釣り人に分けて頂けば1匹500円なら大概はニヤッとされます。網打ちの人やコロガシの人ならば親切にも、ただで下さる方もいます。

それで、タライにあけて選ばせて下さるオトリ屋さんはこれで良いのですが、タモから直接選ぶオトリ屋さんでは泳ぎは確認できません。どうするか?2匹買うとして、まず小さ目のオトリを選びます。2匹目は一番目立つオトリ。大きさでなく色や形。パッと目に付いたオトリを手にします。断定は出来ませんが、大体これで上手くいっています。さて、つかんだオトリのエラが奇形で鰓葉(さいよう:えら蓋の中の赤い部分)が見えている場合はどうするか?気にぜずもらってきます。第一条件はあくまで直ぐに掛かるor良く掛かるオトリですので、鼻ペコでハナカンが通りそうにもない場合を除いては極端に弱っていない限りOKとします。他にもまだ気が付かない決定的なエースオトリの条件があるかも知れません。もしご存知、またはこういう選び方は効果があるとおっしゃる方がおられましたらそっとお教え下さると幸いです。


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Yoshihiro Sogabe in Gifu 2003-06-24