第7回 ポイントの見切り


いくら1匹目が直ぐ掛かって釣れ続いても、まずは5,6匹で一旦掛からなくなります。ましてや朝から夕方まで同一ポイントで釣れ続くことは滅多にありません。更には「これは!」と思って入ったポイントでもダメなことが時々あります。そんなときはポイントを移動するのですが、そのことを”見切り”といいます。この見切りは難しいようで簡単、簡単なようで難しい。私自身ではこの見切りが今のところ最も重要な練習課題です。

まず簡単な理由。基準をつかめばそれ程間違わないことです。何匹か釣れ続いた後に小さい白い鮎や口掛かり、はたまた暫く間を置いて1匹ポロリと釣れる。個人的に”打ち止めの鮎”と呼んでいますが、これが出たらそれで移動するとか、見当をつけたポイントでも一発泳ぎで2,3回泳がせて掛からなかったら移動するとか、ある一定のルールを作ってそれに従えばそれ程失敗はありません。後から入った人が爆釣というのはまずないと思います。大体こういうときは順調なので、後から入って1匹や2匹掛けられても気になりません。ただ、競技会などでは「他にもっと早いペースで掛かるポイントはないか?」という理由で、掛かっていてもあえて見切って移動することもあるそうですが、そのような見切り方は必要としないし、やったことが無いのでお伝えできません。ただ、”勝つ”ことが目的ですとあえて見切るのも必要だろうとは思います。

次に難しい理由。オトリが上手く泳いでくれない場合。多くの釣り人はこれで迷うのだと思います。少なくとも私はそうでした。やっと1匹掛かったとたん、次からは入れ掛かり。そんな経験はどなたでもあるはずです。それでこれはと目を付けたポイントで粘ってしまう。「釣れるのではないか」「(そのうち)釣れるだろう」。トーナメンターがよく口にされる”1日の釣り”というやつです。ここで目印を読む技術が生きてきます。オトリの泳ぎはまあまあだとはっきり分かっていれば、それで掛からないのでしたら既に釣られた後だろうと推測できます。ある程度探って掛からなければ見込み違いとして他へ移動すればよい訳です。オトリの泳ぎの判断基準を利用する見切り。ですから目印の読みと川見は合わせ技だと述べたのです。

もうひとつ難しい理由。ポイントを見つけられないとき。渇水時や鮎が薄いときは特にそうで、どこへ行っても「これは」と言うポイントが無い。特に先シーズン(2002年)の7月の洪水以後がそうでした。これは私の個人的な理由かもしれませんが、「どこも似たり寄ったりなので(ここで)粘ってみるか」と。ポイントへの入川路を知らないというだけで、新規開拓を億劫がることもよくあります。既にどこかで竿出しして、オトリを持っている場合は特にそうです。さらに長良はダメでも九頭竜や根尾は好調なのに、出かけるのをためらう。釣った鮎を引き取ってくれる所が無いとか、遠いので交通費がかかるからとかで、あまり期待できないと分かっていても年券がある川に向かう。この時間と経済の枠を取り払ってしまえば直ぐに解決できるのですが、趣味の範囲でそうしょっちゅう経費をかけられません。枠を外せば道楽か。これが第2の難しい理由です。

では私なりの見切りの基準を。良く掛かっている時は”打ち止めの鮎”です。打ち止めの鮎とは例えば5匹が良いペースで掛かったとすると、最初の4匹までは大体同じペースで掛かり、5匹目はやや間をおいて口掛かりエラ掛りや白い鮎に口曲がり。背掛かりでも型が極端に異なる(小さい場合が多いが、かなりデカい場合もある)鮎が掛かることがしばしばあります。これを”打ち止めの鮎”と称してポイントの見切りの目安にしています。この現象は型や掛かり所もそうですが、次が掛かるまでが時間的に変化した、いわゆるリズムが変わったことも重要な要因と見ています。逆に特別な例として、送り出したと思ったらすぐ手前で掛かるパターンもありますが、これも打ち止めの鮎のひとつと考えています。この打ち止めの鮎が掛かったらすぐにポイント移動するか、軽く探るぐらいにして見切ります。ただし釣り荒れしているポイントでは、やっと掛かった1匹目が既に打ち止めのこともありますので要注意ですが、尾ビレの数ヶ所に軽い裂け目があったりヌルヌルの真っ黄々という訳ではないなど本当に鮎が“(こ)スレている(擦れている)”状態。慣れるとおおよそ見当がつきます。

次に1匹目を探っているときや掛かりが遠いときの自分としての見切りの基準。何度も自主ルールを作っては身に付けようとしていますが、まだまだです。無意識に出来るような習慣になっていません。それで先日、次のように決めました(『釣行記の2003年今シーズンの抱負など』を参照)。“探りのペースは60点の泳ぎで5分、80点以上では泳がせるのは3回まで。”“やる所が無くなった感じがしての釣り返しは厳禁。場所変えする。”“下見の評価で‘まあまあ’以上に入る。6ヵ所以上回っても‘まあまあ’以上がない場合は‘なければ’を認める。 ”以上3項目。これでよい習慣を身に付け、釣果アップor安定した釣果が出せるようになりたいです。

私は場所の見極めに関しては目印を読めるようになってある程度解決しましたが、難しい状況のときはあまり他を探そうとしない観念を変えていくのはまだまだです。これがネックになって釣果が伸び悩んでいると思っています。探しに探せばあるだろうと思って探す。そんな習慣を身に付けたいです。最後に場所探しについて。8月の渇水時は毎シーズン場所探しに苦労するので、上級者は何か決定打を持っておられるのだろうかと思い、講演会で尋ねました。「8月の渇水時でアカ腐れしている時にはどのようなポイントへ入られますか?」小倉均名人のお答え。「そうですねぇ、石が小さいポイントや人が歩くような場所ですかねぇ」と。これを聞いて思いました。「難しい時期は名人といえども決定打は無いのか」と。(本当は先の質問は半分で、お願いした質問票には後ろに「(そのような時に)場所決めをする上で、何かご自分なりの判断基準をお持ちですか?」というフレーズがあったのです。こちらの答えの方がはるかに重要でしたが、進行の児島玲子さんがはしょられました。2003年シマノ鮎フェスティバルin岐阜でのこと)


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Yoshihiro Sogabe in Gifu 2003-06-16 (2003-06-20)